今年も葉歩花庭に行ってきた。しかも新しい方。

早稲田で営業していた葉歩花庭が神楽坂に移転したので、お祝いを兼ねて食事をしに行ってきました。前日も徹夜+当日もギリギリまで仕事でヘロヘロですが、無理やりカタつけてフラフラしながら電車へ。
新しい神楽坂の葉歩花庭は、大きな通りに面していた早稲田と違って「知ってなきゃ来ないダロ」という場所にあります。
http://maps.google.co.jp/maps/ms?hl=ja&ie=UTF8&oe=UTF-8&msa=0&msid=101400389968750100319.000001126fed486ba709e
でも心配はしていない。ボクが葉歩花庭はスゴイナーと思っていることのひとつに「誰かと一緒に食べたくなる」というのがあって、葉歩花庭で食事をする度に「あぁ、あの人に教えてあげたい」「きっと彼は喜ぶだろう」「今度はあの人を誘おう」と思うのよね。お客さんが次のお客を連れてくるって奴だ。美味しい店ってたくさんあるけど、誰かの笑顔が想像できる店って少ないんじゃないか。葉歩花庭のお客さんは、みんな微笑んでるぞ。イイ店だ。
移転して間もないこともあって、新規開店メニューの「新緑会席」をお願いしました。

  • 車海老、若布と筍の煮物、青菜の白和え
  • 鰹のワライブシ握り(例の香りがスゴい奴)
  • 鯛、烏賊、鮪のお造り(!)
  • 季節の真丈をいれた椀物(!!)
  • 天豆、鮑、蛸の桜煮、湯葉と雲丹のジュレ(例の人気ある奴)
  • 鰆(さわら)のテリーヌ
  • 三元豚の塩釜焼き(笑)
  • ご飯x3(笑)
  • シフォンケーキ、プリン、苺ジャム、アップルパイのデザート四種盛り(!)
  • 日本酒大量

流石ですな、と思うのは、すべての食材にキチンと仕事がしてあるところ。一皿に三種を盛っても、すべて「歯ごたえ」が違う。これはスゴイことですよ奥さん。季節感のある食材は当然、それぞれの味わいも当然、この皿は「その次」に行ってんじゃないのか。なんなんだ。寝不足どころか寝てない頭にギュンギュン響きます。
そして出てきたお造りの、美しいことといったら。鮪がね、あぶらのってるのにスキッとした見た目なのです。いかにも大トロだぞ〜といったギットンギットンの鮪とは対照的な、シルクみたいにうす〜く光ってる。んで、摘んだ箸の当たってる部分だけスッとあぶらが内側から出てくるのよね。旨くないわけないだろ。ドウやったらコンなことになるんだ。
目が開いてきましたね、といわれながら出された椀物は、炸裂でした。椀物ってイイよね。特に蓋を開ける瞬間がイイ。何が入ってるのか楽しみで、開けたとたんに広がる香りがタマラナイよね。わ〜い♪って、ここからが本番だったのです。
鯛でとった出汁が予想していた「魚でとった出汁」というのとまるで違ったコクをしているのにビビり、百合根が「ホックリしてるわぁ」と言おうとした瞬間に解けくずれ、真丈が「ムチッっとしていて」と言おうと思ってたのにフンワリしてやがる。もうダメだ。椀の中にあるものが、すべて想像を裏切ってきやがるの。得意技である「知ったような顔」と「分かったような口ぶり」を封じられて、諸手をあげて降参です。コーレーハースーゴーイー。
椀物を食べると落ち着くでしょ、なんていわれながら甘めの濁り酒をワパパパパと呑み、アテのようにだされた蛸の薄さが歯ごたえと甘みのバランスを考えた上でのギリギリだと感じて一人で涙ぐんでました。
隣に座ったお客さんがしきりに気にしていた塩釜焼きの豚がパカーンと割られて出てきたのに喜びと軽い優越感で応え、土鍋で炊いてもらった白米を3杯食べました。だって僕用に炊いてくれてるんだもの、残すなんて考えられヌ。
本来のコース料理には無いのに気を使ってだしてくれたデザートを頬張りながら、ものを作るって事のスバらしさを改めて感じてました。頭が下がります。眠ってしまいそうだ。寝不足だからか感動が処理限界を超えたからか、ドッチだろう。
食後のお茶を頂きつつ、内装をめぐる冒険譚と食器の話、今日の食事にタドタドしい感謝を述べて帰ってきました。僕はね、もっともっと作っていかにゃぁならんと思うのですよ。食べに行く度に、そう思います。ごちそうさまでした。