良い呑み屋

僕が外で呑むっていうとお気に入りの四軒をローテーションしているわけですが、そのうちの一軒、呑み屋の娘さんの誕生日が近いッてんで地元の洋菓子屋でケーキ買ったりして「あらtexasさん、うちも子供が継いでくれないんで店閉めることにしたわよ」なんて衝撃の告白を聞きつつ、中学受験で眠ぃ眠ィーとかいってた娘が大学生とは僕も歳をとるはずだわ、なんてつぶやいて店の引き戸を開けたら団体さんの予約で満席また今度ね、となりまして、ケーキだけ渡して退散です。
胃袋が呑む準備万端なので帰るわけにもいかず、近くにあるもう一軒の店へ潜り込みました。
久しぶりですねいやいや外で呑む機会が減っちゃって、なんて話しながら泡盛をロックでお願いして、この店は始めた頃の雰囲気や勢いがなくなって常連が足遠のいてるけど今時は客の回転重視だから仕方ねぇヨ、なんて講釈をしたのはいつだったかな、なんて思いつつ一杯目の泡盛を呑み切ったグラスのたてる「カラン」という氷の音を聞いたか聞かないか、こちらをチラリと見やった店員さんに空のグラスをかかげると、すぐにおかわりをもってきてくれました。今じゃ呼んだって来てくれない店もあるってのに、音だけ聞いてこっちを見やるなんて素晴らしいじゃない。店長さんの教育があってこそじゃない。やっぱイイ店だわ〜なんて一気に嬉しくなったりしてな。
初めて見る新人さんがアタフタと皿やグラスを洗っているのを見ながらがんばってちょ〜だい、なんて生ぬるい視線を送っていると、遅番で入ってきた顔見知りの店員さんにお久しぶりです、なんて声かけられていい気になりまして、ニコニコしつつも眺めていたら、前掛け巻いて指輪を外してから洗い場に立つのを見て、あぁやっぱりイイ店だわ、なんて思いました。ガラスのジョッキは指輪があたった程度でも割れるもの。経験か教育かわかんないけど、そりゃ繁盛するわいな、と納得しつつ、店を後にしました。
勉強になった。感謝。